こんにちは。大阪府池田市/阪急宝塚線池田駅の自然療法整体院【関西カイロプラクティック】院長の鹿島 佑介です。
ダイエットと食欲コントロール法に関する本が、予想外に面白かったのでご紹介します。
ダイエットと食欲コントロール方法に関する本~ダイエットとマシュマロテスト
脳をだませばやせられる 「つい食べてしまう」をなくす科学的な方法 [ ステファン J.ギエネ ]
私にとっては、超面白い内容でした。
ただし、一般向けの「〇〇をやめればやせる」的な簡単な本ではなく、専門的な内容です。
私にとって一番面白かったのは、特に、今まで理解しづらかった大脳基底核の機能が非常にわかりやすく書かれていたこと。
食欲に関与する体内の組織のことは、現在わかっている範囲でほぼすべて書かれています。
■本のまとめ
- 大脳基底核の報酬システム
- 眼窩前頭皮質(OFC)と副内側前頭前野(可能な選択肢についてコストと利益を検討し、最善の「取引」を選択する経済的選択システム)
- 視床下部のリポスタシス(視床下部に位置する無意識のシステムで、食欲、誘惑的な食品への反応、代謝率に影響して、体脂肪の量を調節している。)
大脳基底核の報酬システム
『計算論理的神経学と人口知能の研究者によれば、コンピューターであれ、生物であれ、効率的な選択装置には、重要な特性が求められる。
それは次の3つだ。
1、選択装置は必ず一つの選択をしなければならない。
2、選択装置は、どんな状況でも最善の選択を選ばなければならない。
3、選択装置はきっぱりと選択しなければならない。』
これこそが、大脳基底核の選択装置としての機能なのです。
最善の選択をして最善の行動をするということですね。
ダイエットするために食べないという意見と、おいしいものを食べたいという意見を選択をしているんですね。
『大脳基底核はある行動だけを筋肉とつなぎ、他を排除する警備員のようなものだ』
行動と筋肉をつなぐというのが大脳基底核機能のポイントです。
だから大脳基底核は心理的問題にも肉体的問題にも両方影響するのです。
『両立し得ない選択肢をきっぱりと排除して唯一の選択肢を選ぶ』
両立し得ない選択肢をきっぱり排除できなければ、強迫神経症や不安神経症などの精神症状にもつながります。
他の選択肢を排除できないので同じ選択肢がループしてしまうのです。
『各生成器は常に、筋肉を使う権利を巡って他の生成器と競い合っており、どの瞬間も、最強の指令を出す生成器が競争に勝つ』
無意識もかかわっていますから、いくら強い意志でダイエットするぞ、と思っても、おいしいものを食べるという信号が強ければ食べてしまうんですね。
線条体(大脳基底核の一部で尾状核と被殻を合わせた名称)でのドーパミン(神経伝達物質)の役割
『線条体のドーパミン濃度が高いと、大脳基底核は入ってくる指令に反応しやすくなり、活発に動くかどうかを決めるハードルが低くなるのだ。逆にドーパミン濃度が低いと、大脳基底核は入ってくる指令に反応しにくくなり、活発に動くかどうかを決めるハードルが高くなる。その結果、動物は動かなくなる』
例えば、パーキンソン病はドーパミンが低い状態です。
自分の意思で筋肉を動かそうと思っても動きにくくなるんですね。
ただしパーキンソン病は線条体の問題ではなく大脳基底核の黒質部分の変性が原因とされています。
ドーパミンが過剰だと、たくさんの選択肢を選んでしまうことにもなり、依存症のなったり、不安や恐怖が消えなくなったりするのです。
『過剰なドーパミンのせいで、入ってくる指令に腹側線条体が非常に反応しやすくなり、不適切な選択肢生成器が手綱を握るのだ。加えて、線条体のドーパミン濃度が高いと、徐々にある種のループが異様に強くなり、それが脅迫的で中毒性の行動を招く。』
おいしいものがやめられなくなる。過食になるんですね。
『ドーパミンは「快楽物質」というより「学習物質」なのだ。』
『脳はドーパミンを放出して、それらの食品を食べるという行動を強化するのだ。』
なるほど…快楽物質と思っていました。
『線条体のドーパミン濃度が非常に高くなると、ある行動が過剰に強化され、その人のためになる事前な行動よりも優先されるようになる。これが依存の本質だ。』
依存症は脳の問題ですので、治すのはそう簡単ではないんですね。
『糖質は脳の報酬中枢の特別な場所に働きかけるが、それはおそらく遠い祖先の時代には、甘味が果実とハチミツ---どちらも安全で貴重な栄養源---を意味していたからだ。人類の歴史を通じて、この二つだけが甘味の源だった。』
だから、農業によって生まれた穀物など、特に精製穀物や精製砂糖が中毒になるんですね。
眼窩前頭皮質(OFC)と腹内側前頭前野(可能な選択肢についてコストと利益を検討し、最善の「取引」を選択する経済的選択システム)
『眼窩前頭皮質(OFC)は大脳基底核と相互作用している。』
『OFCは二つの予測値を大脳基底核に送り、そこでは線条体がそれを比較して、価値の高い方を選ぶ』
この眼窩前頭皮質(OFC)という部分については、マシュマロテストという有名な実験があるのでご紹介します。
マシュマロ・テスト 成功する子・しない子 (ハヤカワ文庫NF) [ ウォルター・ミシェル ]
これは自制心を測る実験の話しです。
「マシュマロをすぐ1個もらうか、それともがまんして、あとで2個もらうか」という実験を子どもを使っておこなったものです。
実験の内容は、このYouTubeをみるとわかります。
特に左側の眼窩前頭皮質(OFC)と大脳基底核の線条体という場所は自制心と関係します。
先ほども出てきたように、眼窩前頭皮質(OFC)は価値の高い方を選ぶのです。
眼窩前頭皮質(OFC)の機能が落ちると自制心がきかなくなり食欲コントロールができなくなるため、ダイエットがうまくいかなくなることがあるのです。
③視床下部のリポスタシス(視床下部に位置する無意識のシステムで、食欲、誘惑的な食品への反応、代謝率に影響して、体脂肪の量を調節している。)
『視床下部腹側内側核を破壊したラットは異常な肥満になる』
『脂肪組織はホルモン様の満腹因子を分泌し、その因子は、血流によって脳の満腹中枢に運ばれ、そこで食欲を抑制し、ひいては脂肪の蓄積を抑える。』
『満腹因子と視床下部腹内側核はこのようなフィードバックシステムを形成して脂肪の蓄積を調節していると推測し、このシステムを、ギリシャ語の「脂肪」と「定常性」から「脂肪定常性(リポスタシス)」と名付けた。』
視床下部は自律神経の中枢でもあり、内分泌系の中枢でもあり、心身のホメオスタシス(恒常性)を保つための器官です。
『レプチンは脂肪組織が生成するホルモンで、脳内で食欲と肥満を制御しているのだ』
レプチンがやせ薬になるのでは、と話題になったこともありましたが、実際にはやせ薬にならないそうです。
その理由も書かれています。
『視床下部の炎症が、レプチンやインスリンへの抵抗性を引き起こし、脂肪蓄積の設定値を上げて肥満を招いている』
炎症の理由はさまざまです。
感染症、有害な重金属、活性酸素などなど。
『心理的ストレスがコルチゾールレベルを急上昇させ、そのせいでリポスタシスのレプチンに対する感度が落ち、過食して、体重が増える。』
コルチゾールとは、副腎皮質が作るステロイドホルモンです。
ステロイドを取り続けると太るのは、レプチンに対する感度が落ち、過食になっているのかもしれませんね。
『ニューロペプチド(NPY)が、満腹中枢として知られる視床下部腹内側核の一部である弓場核のニューロンによって生成されること、NPYは飢餓状態になると増えるので、おそらく空腹に関与していることが分かった。』
『メラノコルチンは弓状核の特別なニューロンで生成される。そのニューロンはメラノコルチンの前駆体であるPOMC(プロオピオメラノコルチン)タンパク質にちなんでPOMCニューロンと名付けられた』
『NPYニューロンとPOMCニューロンは脂肪組織を調節するためのインプットとアウトプットをつなぐ重要な収束点』
『肥満ラットと肥満マウスの視床下部のアストロサイトは大きくなり、フィラメントが絡まりあって分厚いマットのようになっていた。ミクログリアも大きくなり、数が増えていた。どちらの変異もNPYニューロンとPOMCニューロンのある部位、すなわち弓状核だけで起きており、他の部位では見られなかった』
アストロサイトとミクログリアは神経膠細胞(グリア細胞)の一種で、神経を守る役割を担っています。
脳を傷つけるものすべてに対してアストロサイトとミクログリアが増え、治癒を助けます。
『これまで多くの研究者が、視床下部を変化させて肥満を導くメカニズムを解明しようとしてきた。』
『食物繊維が少ないので、腸の細菌叢に悪影響を及ぼし、炎症と肥満を導くと考える研究者もいれば、原因は飽和脂肪酸にあり、オリーブオイルのような不飽和脂肪酸を使えば肥満しにくい、と主張する人もいる。』
『精製された高カロリーのおいしい食事が、脂肪蓄積の設定値を引き上げて体脂肪を増やすのは確かで、それは人間を含むさまざまな動物に共通することなのだ。』
当院で行うフィシオエナジェティックで痩せない原因を調べると、甲状腺や副腎など内分泌系の問題や肝臓の代謝機能などの問題も多いありますが、今のところすべての人に出るのが、必須脂肪酸(不飽和脂肪酸)不足です。
『あなたがたった今食べた物の量と質を暗号化したシグナルは、脳の孤束核(NTS)に収束する。』
『かつては視床下部の一部が「満腹中枢」と呼ばれ、レプチンは「満腹因子」と呼ばれていたが、現在では、脳幹が、食事ごとの満腹感を調整する主な脳領域であり、レプチンと視床下部は長期的なエネルギーバランスと脂肪蓄積を調節していると考えられている。』
脳幹のことはそれほど詳しくは書かれていませんが、延髄の孤束核は迷走神経とつながっています。
迷走神経は内臓を動かす脳神経の一つです。
内臓の状態を感知して満腹感を調整しているのですね。最後に理論的な部分だけで、具体的な食欲コントロール法については全くまとめていません。
どのように食欲をコントロールしたらいいのか、についての具体的方法については、本を買ってお読みください。
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