こんにちは。大阪府池田市/阪急宝塚線池田駅の自然療法整体院【関西カイロプラクティック】院長の鹿島 佑介です。
本日は、「脳-免疫相関」 に関する素晴らしい本をご紹介します。
『脳と免疫の謎 心身の不調はどこからくるのか 』
著者:毛内 拡
出版社: NHK出版
価格:1,078円(税込み)
脳と免疫の謎 心身の不調はどこからくるのか/毛内拡【1000円以上送料無料】
とても難しい話なのですが、最近になってわかってきた脳に関する最新情報が満載です。
「脳-免疫相関」とは?
裏表紙に書かれている内容を引用します。
『「脳の免疫細胞」と言われるグリア細胞の研究が進み、脳と免疫の相互作用が心身の不調、精神疾患、依存症などに影響を及ぼしていることが明らかになってきている。いったい脳の中で何が起きているのか。脳と免疫の知られざる関係とは。脳疲労・炎症のメカニズムだけでなく、病気との関連性や脳パフォーマンスの上げ方、セルフケアまで、気鋭の脳科学者が最新研究の成果をわかりやすく解説する! 』
脳内の免疫システムが解明されてきたのはごく最近の話しなんです。
「脳-免疫相関」 と言う言葉もごくごく最近にできた言葉だと思います。
「脳-免疫相関」 において重要な役割をしているのがグリア細胞です。
グリア細胞は神経膠細胞と言われ、脳神経や血液脳関門、脳の免疫、脳脊髄液の生成にとって非常に重要な細胞です。
グリア細胞には、
- ミクログリア( =マイクログリア:小膠細胞)
- アストロサイト( 星状膠細胞)
- オリゴデントロサイト( 希突起膠細胞=乏突起膠細胞)
- 上衣細胞
- 伸張上衣細胞(タニサイト)
- 幹細胞
があります。
免疫に一番かかわるのがミクログリアです。
『グリア細胞は、従来、単にニューロンの隙間を埋めているだけで何もしていないと考えられていました。昔は、ニューロンを10%とすると、グリア細胞は脳内の90%を占めると考えられていて、「脳は10%しか使われていない」という言説がまことしやかに語られていました。しかし、これは現在では間違いであることがわかっています。 』
もともとグリア細胞は隙間を埋めているだけで機能のない支持細胞であると思われていました。
語源である膠(にかわ)は接着剤を意味します。
『最近の研究では、ニューロンとグリア細胞の比率は大体1:1、つまり、脳の半分がグリア細胞とされています。さらに、このグリア細胞が、「健康な脳」にとって重要な働きをしていることが次々と明らかになってきました。何もしておらず、単に隙間を埋めているだけなんてとんでもない。むしろ、グリア細胞とニューロンがうまく相互作用をし、連携が取れている状態こそが健全なのです。』
以前、グリア細胞は8割と聞いたことがありますが半分なんですね。
これも正解かどうかはわからないですね。
『グリア細胞は、「脳の免疫細胞」と言っても過言ではありません。脳にも免疫があると言うと驚かれるかもしれませんが、脳だって、異物や老廃物を取り除かないと正常に働けません。最近では、脳も身体の免疫系の影響を受けて、炎症状態になることが知られています。そこで、活躍するのがグリア細胞です。
脳には、このグリア細胞からなる独自の免疫系があり、さらには「血液脳関門」と呼ばれる鉄壁の守りがあるので、基本的には身体が受けている病気やそれに伴う炎症からは保護されています。このような現象は、脳の「免疫特権」と呼ばれています。』
脳の免疫担当細胞ミクログリア
先ほど言ったように脳の感染から脳を守ったりごみを取り除く免疫機能をするのがミクログリアです。
ミクログリアの役割は、主に免疫機能で、
- 中枢神経の免疫担当細胞(サイトカイン(生理活性物質)の産生)
- シナプスの刈込み(過剰なシナプスや電気的活性の低いシナプスを除去)
- 神経の修復作業
- 死んだニューロンの貪食除去
- アミロイドβなどの老廃物の貪食除去
- 海馬での神経新生(記憶の獲得)と過剰な神経新生の抑制
- 血液脳関門を守る
などの免疫機能を担当しています。
血液脳関門を作るアストロサイト
血液脳関門を作るのがアストロサイトです。
アストロサイトの役割は、血液脳関門以外にも様々な機能があり、
- 神経細胞ネットワークを作る
- シナプスを包み込み神経伝達物質の余剰分を回収
- ナトリウムイオン・カリウムイオン・カルシウムイオンの濃度調節
- 血流を調整しニューロンのエネルギー供給(グルコース ⇒ 乳酸 ⇒ ニューロンでATP(エネルギー)合成)
- コレステロールの合成(細胞膜の材料)
- 血液脳関門(BBB)の閉鎖機能
- 神経栄養因子の分泌
- APoE(アプリプロテインE)の産生(コレステロールの運搬、アミロイドβの排出)
- グリンパティックシステム(老廃物の排泄)と脳脊髄液を調節
などがあります。
髄鞘を形成するオリゴデンドロサイト
他にも主に脳神経細胞の髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトというグリア細胞があります。
オリゴデントロサイトは、
- グリア細胞の半分を占める
- 中枢神経系内での髄鞘(ミエリン鞘)形成 ⇒ 神経電動速度の向上
- 栄養補給機能
- 鉄を大量に使うため活性酸素の影響を受けやすいため脳の中で最も脆弱な細胞
- オリゴデンドロサイト前駆細胞OPCはアセチルコリンとグルタミン酸と拮抗する形で増殖が調節されている
などです。
グリンパティック・システムと神経伝達物質ノルアドレナリン
『心を病んでいる状態は、頭にモヤや薄い膜がかかった状態と形容されることがあります。話題となったコロナ後遺症の症状の一つ、「ブレインフォグ(脳のモヤ)」も、同様の状態であると考えられます。この時、脳ではいったい何が起こっているのでしょうか。
最近の研究では、身体で発生した炎症性物質が脳にも影響することで、結果として脳の働きが鈍くなると言われています。さらに踏み込んで言うと、私は、特に炎症性物質によってグリア細胞が機能不全となることで、このような心の不調が生じると考えています。 』
ブレインフォグの原因は炎症だけではないですが、炎症が一因であることはまあ違いありません。
炎症物質ではありませんが、間接的に炎症と関わる神経伝達物質ノルアドレナリンについて少しだけ引用して説明します。
『脳のなかの洗浄システムは、睡眠中に活発になることが示されました。睡眠と覚醒をコントロールしているのは、ノルアドレナリンという神経伝達物質ですが、覚醒時にノルアドレナリンが放出されてアストロサイトのノルアドレナリン受容体が活性化すると、アストロサイト自体が水を含んで膨らんで、細胞と細胞の隙間が狭くなります。一方で、睡眠中はノルアドレナリンが減少するので、アストロサイトが縮むことで細胞と細胞の隙間が広がって液体が流れやすくなります。』
こ
の脳の洗浄システムは「グリンパティック・システム」と呼ばれています。
睡眠が脳デトックスに重要と言うことですね。
『脳の免疫担当であるミクログリアが、ノルアドレナリンを受容すると、活性型に変容し、炎症性物質を含む生理活性物質を放出します。』
『短期間であれば、の運はこうしたピンチ状態をやり過ごすことができます。しかし、このような状態が長く続くと、ミクログリアが常に炎症物質を放出し続け、脳は慢性的な炎症状態に陥ります。その結果、アストロサイトによるメンテナンス機能も阻害され
ニューロンが十分に修復・保護されないままダメージが蓄積していくことになるのです。』
そもそも慢性的にノルアドレナリンが過剰になると不眠症の原因になりますから、ノルアドレナリンをきちんとコントロールすることは重要ですよね。
その仕組みやノルアドレナリン過剰になる原因はさまざまです。