よく患部を温めたほうが良いのか?、冷やした方がよいのか?という質問を受けます。
どちらが正しいのでしょうか?
使い分ける必要があるのでしょうか?
温めた方がいいの?冷やした方がいいの?/アイシングの必要性
例えば昔、野球選手は肩を冷やしてはいけないと言われていましたが、今は氷水で冷やすのが当たり前になっています。
実はどちらも正しいのです。
組織の損傷を回復させるポイントは血行の促進です。
どちらも血流を良くして治癒を早める効果があります。
ただし急性疾患(ぎっくり腰、捻挫など)で炎症がある場合、温めるのは厳禁です(お風呂も厳禁です)。副交感神経(自律神経)の働きで患部の血行が良くなり過ぎるので、炎症をひどくさせます。
炎症は治癒反応なので悪いことではありませんが、過度な炎症は痛みを伴う上、瘢痕組織を作るため、組織の弾力性が失われまた炎症が起こりやすくなってしまいます。
そこでアイシング(氷で冷やす)をすることにより、一時的に血管を収縮させ炎症を抑えるとともに、麻痺作用により痛みを軽減してくれます。
温める | 冷やす(アイシング) | |
---|---|---|
長所 | 血行を良くして治癒を早める。 | 副交感神経を刺激し、血行を良くして治癒を早める。 炎症を抑える。 瘢痕組織の増殖を抑える。 痛みを抑える。 |
短所 | 温度調節が難しい。 炎症を促進させるので痛みが増す。 瘢痕組織(壊れた組織に置き換わる硬い組織)ができる。 | 最初は冷たいので抵抗がある。 |
しかし、当院では冷やすことをおすすめしています。なぜかというと温める方法と冷やす方法にはそれぞれルールがあるのですが、冷やす方がルールが簡単だからです。
アイシング(冷却療法)の方法
冷やすと同時に炎症がおさまり、瘢痕組織がつくられるのを抑えられます。また、痛みもおさまります。
それだけではありません。
しばらくして患部が冷えてくると脳幹の働きにより副交感神経が働き、血流を増やし治癒を早めてくれますので慢性疾患にも効果的です。
患部を温めた方がよいのか冷やした方が良いのかという質問を受けますが、急性疾患でも慢性疾患の場合でも、冷やした方が自然治癒力が発揮されやすいです。
急性疾患で炎症がある場合、温めるのは厳禁です(お風呂も厳禁です)。
氷嚢もしくはビニール袋2枚用意します。専用のアイシング用品もあります。 | |
必ず0度から5度で冷やします。氷嚢もしくは二重にしたビニール袋に氷を入れ、必ず真水を少し入れなじませてください。冷凍庫はマイナス18度くらいに設定されていますので、溶けていない氷はそれに近い温度ですから凍傷になってしまいます。 | |
必ず直接皮膚に当ててください。患部の場所やその人の体形によって、冷やす時間は変わります。それは脂肪層の厚さによって変わり、約10分から30分です。首や肩など脂肪の少ない部分は10分程度が良いでしょう。腰は脂肪層が厚いので20分から30分程度が良いでしょう。目安は冷たい(痛い)という感覚が完全になくなり、触られている感覚がなくなるくらいです。 | |
急性炎症(ぎっくり腰、捻挫など)の場合は、1時間くらい間を空けて何度も冷やしましょう。 |
注意点
- アイスノンなどの冷却パックは0度以下になるので、凍傷になる恐れがあります。
- 絶対に塩はいれないでください。0度以下になるので凍傷を起こします。
温め方
- 入浴により温める場合は、38度から40度くらいのぬるめのお湯にゆっくりつかりましょう。42度以上のお湯は交感神経を刺激するため、血行不良が起こります(一般的に「湯冷め」と呼ばれます)。
- 蒸タオルで温めると効果的に血行促進が可能です。熱めのお湯で濡らしたタオル(厚手のもの)を固く絞り、折って患部にあてます。濡らしたタオルを電子レンジで温める方法もあります。この場合、内部が熱くなってますので少し冷えてから使用しましょう。時間は3分から5分です。
注意点
- 急性疾患で炎症がある場合、温めるのは厳禁です(お風呂も厳禁です)。
- 使い捨てカイロで温めるのは厳禁です。血行不良を起こし治癒を遅らせます。